司法書士の仕事

司法書士補助者勤務は本試験の合格に役立つか

司法書士事務所に補助者として勤務する前、補助者勤務は司法書士試験に役立つと思っていた。今年の本試験では少し役立ったかも?と思っている。具体的にどんなところで役だったのか書いておこうと思う。

ちなみに今勤めている事務所の仕事は不動産登記が9割なので、不動産登記の択一と記述について書いてみる。

択一の不動産登記法

択一の不動産登記法で役立ったと思うのは、この3つ。16問ある中でこれだけだから、そこまで役立っている訳ではないのかも。でも司法書士試験では1問1問が大事なので、補助者をしていなかったらこの3問を落としていたかもしれないと思うと、補助者勤務の経験が結構な貢献しているのかも。

択一第17問:登記識別情報と登記完了証の通数

補助者をするまでは、登記完了証を見たことが無かったので、登記完了証がどういったものなのかイメージ出来ていなかった。

テキストには登記完了証がどういった時に通知されるかは書いているので、テキスト読んでイメージ出来る人には関係ないかもしれないけど、自分はこの問題を解く時には実務で通知される場面を思い浮かべて、それに当てはめて考えていった。この問題を解くのに補助者経験が役立ったと思う。

択一第25問:信託

最近流行りの家族信託。事務所でも家族信託の案件をやったことがあって、その時に信託について結構勉強したので、信託に対する抵抗感は無くなっていた。

問題解くのに直接その時の知識が役立った訳ではないけど、信託は机上の勉強では中々理解が難しかったので、実務を通して信託の流れを掴めたことで問題文の場面をイメージしながら解くことが出来た。

択一第27問:登録免許税

実務で絶対間違えられないことの一つが登録免許税の計算。間違えてしまうとお客様への見積額・請求額が変わってしまうし、間違えた登録免許税で申請してしまうと登記が通らなくなってしまう。

登録免許税の計算は、実務を始めてから慎重かつスピーディに計算する訓練が出来ていた。補助者勤務する前でも税率はテキストの勉強で頭に入っていたけど、早く計算して計算間違いをしない確率は補助者勤務をしてから断然に上がったと思う。

記述式の不動産登記法

事務所の仕事は定型の目的・原因が多いので、実務でやった案件の内容がそのまま今年の本試験に出た訳ではないけど、ちょこちょこと補助者経験が役立ったと思うところがあった。

ちなみに「定型の目的・原因」とは、「抵当権/根抵当権抹消・年月日解除/放棄」「所有権/持分移転・年月日売買」「抵当権設定・年月日金消年月日設定」「根抵当権設定・年月日設定」のこと。事務所で扱う案件は「抹消→移転→設定」の流れが多い。

別紙の契約書の読み方

今年の本試験では、別紙に売買契約書と地上権設定契約書、根抵当権設定契約書が出た。売買契約書と根抵当権設定契約書は、常日頃目にして読むものなので、別紙で出された時には「大体こんなことが書いてあるんだろな」と予想しながら読むことが出来た。普段目にしているものが出ると安心する。

地上権を設定する案件はやったことがないので地上権設定契約書については馴染みがなかったけど、契約書を読むこと自体に抵抗が無くなっているので、現場で目にしてもアタフタすることなく落ち着いて読むことが出来た。

登記原因証明情報について

売買に関する登記原因証明情報の「登記の原因となる事実又は法律行為」については、これまで実務で何百回と書いてきた。実務では売買で所有権を移転する際は、ほぼ支払い条件特約付きなので、今年の本試験でも実務でいつもやっている内容を思い出して書くことが出来た。

ただ、後見絡みの案件はやったことは無いので、後見人・後見監督人の論点は全く触れずに書いてしまったのだけど…^^;。

取扱店の表示について

問題集を解いたり模試を受けたりしても、根抵当権者の取扱店の表示を書かせる問題に出くわしたことはあまりなかった。実務では銀行が根抵当権を設定する際、必ずといっていいほど取扱店の表示を記載する。取扱店の表示の記載を忘れてしまって、そのまま登記されると、銀行から大目玉をくらうだろう・・・。

一度、取扱店の表示の記載を忘れたまま申請してしまったことがあった。その時は法務局から「取扱店の表示は記載しなくていいですか?」と確認の電話が入ったので命拾いしたのだけど、肝っ玉冷や汗ものだった。それ以来、取扱店の表示の記載には敏感になっていたので、今年の本試験でも根抵当権者の記載をする時には契約書に取扱店の表示がないかを自然とチェックすることが出来た。

こう書いてみると補助者の経験が直接役立っていることが少ない気がする。でも補助者をしていないと実際の場面をイメージするのが難しいことが結構ある。問題文の場面だったり手続きの流れをイメージしやすくなったりしただけでも、補助者勤務の経験は本試験の問題を解くのに結構役に立っているんじゃないかと思う。


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