司法書士の仕事

司法書士のお仕事3[住宅ローン完済後の抵当権抹消登記]

抵当権抹消

住宅を買う時に銀行で住宅ローンを組むと、銀行の抵当権が設定される。

住宅ローンを完済すると、その抵当権を抹消する。今回はその話。

1件目:住所変更登記

住宅ローン完済後の抵当権抹消のお仕事は、色々なところから話がくる。もともと付き合いのあるお客様や、業者からの紹介、飛び込み、友人や知り合いなど。

話がきたら、対象物件の登記簿謄本と、銀行から依頼者のもとへ届いた抹消書類一式を確認する。ここでいう抹消書類一式とは「抹消証書」「委任状」「登記識別情報(又は登記済証)」の3点セット。

登記簿謄本は、住宅を購入した時に貰っているはずで、権利証と一緒に保管していることが多いので、その当時のものがあるかをまず確認して貰う。あったらそれを預かり、なければこちらで登記情報をあげる。登記簿謄本があっても、昔すぎるものや、持ってきた登記簿から登記簿に動きがあるような時は、最近のものを取得する。

多くの場合、購入当時は、今の住民票上の住所より以前の住所で所有権の登記名義人になっている。住宅を購入する時は、まだその家に住んでおらず、以前の住所で登記をするから。

そういう訳で、大抵の場合は抵当権抹消登記の前提として、登記簿上の所有権の登記名義人の住所を、今の住所に変更する「所有権登記名義人住所変更」登記をする。

住所変更登記には住民票の写しが必要なので、依頼者に取ってもらうか、職権で取る。

2件目:抵当権抹消登記

次に抵当権抹消登記申請の準備をする。登記簿謄本と抹消書類から、抹消すべき抵当権を特定する。

たまにあるのが、抵当権抹消の書類が届いた後、何年も放っておいて、抹消書類を発行した当時の銀行の代取と今の代取が違うという事案。

この場合、委任状上の代取の氏名と、今の代取の氏名が違うので、そのまま何も考えずに申請書に委任状上の代取の氏名又は今の代取の氏名を書いて申請しても登記が通らない。

登記を通すのには2つのパターンがある。一つ目は、銀行に今の代取の氏名の記載のある委任状を発行して貰う方法。でもこれは依頼者にも銀行にも負担がかかるので、自分はこの方法はとらない。

もう一つは、申請書に会社法人等番号と登記義務者として今の代取の名前を書き、以前の代取の代表権限が消滅した旨及び代表権限を有していた時期を明らかにするため、「登記義務者の代表者○○の代表権限は消滅しているが、代表権限を有していた時期は平成何年何月何日から平成何年何月何日である。」と書いて申請する方法。これだと、依頼者にも銀行にも手間を取らせずにこちらで対応して申請できる。

なぜこれが出来るかというと、ざっくり言うと、代取が変わっても以前の代取の登記申請代理権は消滅しないから。以前の代取が発行した委任状がそのまま使える。

お疲れ様でした。

そういう訳で、多くの場合、1件目に住所変更登記、2件目に抵当権抹消登記の連件で申請する。

申請書を作成し、添付書類をつけ、管轄登記所に申請書を提出する。ほどなくして登記が完了する。完了したら、完了書類が郵送で届くか、完了書類を法務局に引上げにいく。そして、ちゃんと住所変更登記と抵当権抹消登記が出来ているか、登記簿謄本を取って確認する。

登記の仕事はどんな仕事も好きだけど、住宅ローンの抵当権抹消登記の仕事も好き。なぜかというと、住宅を購入した後、頑張って働き、何年もかけて毎月住宅ローンを返済して完済したことは、その人が頑張ってきた人生の証のように思うから。

抵当権抹消登記が完了し、依頼者に完了書類を渡す時、「(大抵、自分より年上の方に向けてなのだけどw、)これまで頑張ってきましたね。お疲れ様でした。完済そして抹消おめでとうございます。」という気持ちでお渡ししている。


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