司法書士の仕事

ある日突然自分が田舎の土地を相続するかもしれない話

ある日突然の相続

先日、叔父から相談の電話を受けた。

役所から「あなたは亡○○さんの相続人です。亡○○さん名義の田舎の土地の地積調査をするので○月○日に立ち会いお願いします」という手紙が突然来たのだけど、どうすれば良いか、という話。

突然身に降りかかる相続問題

叔父さん曰く、亡くなった○○さんの存在も知らないし、ましてや自分が亡○○さんの相続人であること、亡○○さんが沢山の不動産を持っていたことなど知る由もないとのこと。

同じ内容の手紙が来た兄弟に相談してみたけど、どうしたらいいか分からないと言われたと。

まずは事実関係を確認するために、役所から来た手紙を写真で送って貰って内容を確認した。確かに、○○さんが亡くなったこと、亡○○さん名義の不動産がいくつかあること、叔父さんが亡○○さんの相続人であること、そして境界確定のために立ち会い調査に協力して欲しい旨が書いてあった。

叔父さんの意向を確認してみた。「亡くなったのは全然知らん人やし、田舎の土地貰っても仕方ないし、出来るだけ関わりたくないんやけど。」ということだった。

なるべく分かりやすいように噛み砕いて、相続人全員で遺産分割協議をして欲しい人にあげたり、相続分の譲渡で自分以外の人にあげたり、家庭裁判所に相続放棄の申述をして相続関係から離脱するなど、色々な方法を提示してみた。

「よく分からんけど、関わりたくないし、早く安心したいわ。相続放棄っていうの良く聞くけど、相続放棄したら関わらんで良くなるんかな。」ということだったので、相続放棄について、より詳しく説明した。

相談を受けていて多いのが、遺産分割協議で他の相続人に遺産を譲ることを相続放棄だと思っていて、家庭裁判所に申述する相続放棄の違いがよく分からないという質問。確かに、自分が遺産を貰わないという点で遺産分割協議でも相続放棄でも大きな括りでは同じだし、厳密な言い方や手続きについては相続人にはあまり興味がないことかもしれない。

「相続放棄は、亡○○さんの遺産を一切合切放棄することだから、もし預貯金が莫大にあっても貰えなくなるけど、大丈夫?今回連絡あった不動産だけを放棄することは出来ないけど。」と言ってみたところ、「預貯金があったらあったで、他の知らん相続人と揉めたりしそうやし、いらんわ。その相続放棄っていうのにしようかな。」ということだったので、今回は相続放棄の手続きをすることになった。

叔父さんは役所からの手紙で自分が亡○○さんの相続人であること、そして遺産に不動産があることを知った。まだ家庭裁判所への相続放棄の申述期間である3カ月以内の期間内であることは明白だった。相続放棄の申述に必要な戸籍を取り寄せたり、申述書を書いたりする時間を考慮しても、時間は十分にあった。そういうわけで、今、相続放棄をするために手続きを進めている。

放っておくと、後々に面倒臭いことになる相続問題

ところで今回、叔父さんの兄弟達にも同じ手紙が来ていた。兄弟の中には「そんなの放っておけ」と言って、取り付く島もない兄弟もいたとのこと。さとるからも一言言ってあげてと叔父さんから言われたので、

「放っておいたら役所の方も困るだろうし、何より、自分が相続人になっているということは、もし自分が死んだ後は、その相続問題は子ども達に引き継がれるわけで。相続的な手続きをしないなら、役所の立ち合い調査に協力するべきで。

今回みたいに役所が境界確定の手続きをしてくれるというのなら、その時にしておいた方がいいと思う。境界が不明なままでは処分をしようにも出来ないし、結局、処分をしようと思った時に土地家屋調査士等にお願いして境界を確定しないといけないんだから。その時には費用もかかるよ。」

と、その兄弟の人にも言ってみた。

「ふーん、そうか。考えとくわ。」と言われたけど、その後どうなったのかは知らない。

相続の問題に限らず、問題は解決することを先延ばしにせず、できる時に早め早めに解決するにこしたことはない。先延ばしにすればするほど面倒なことになったり、解決しづらくなることが往々にしてあるから。自分だけの問題だったらそれでも良いけど、他の人に迷惑がかかるような可能性があるなら尚更。

ちなみに今回相談してきた叔父さんには「さとるが司法書士になってくれて良かったわー。ありがとう。」と言われた。少しでも子供の時から良くしてくれた叔父さんの役に立てたなら良かった。


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