テキスト・過去問・問題集

『セイギとミライ-熱血司法書士の事件簿-』第2件目「司法書士」

セイギとミライ2

セイギとミライ-熱血司法書士の事件簿-』第2話は「司法書士とは何か」がテーマ。

司法書士とは法律書類作成のプロ
正確な知識 明確な情報 それらを白い紙に落とし込み
ペン一本で戦う法律家
セイギとミライ-熱血司法書士の事件簿-』第1巻より引用

いいね。

司法書士がする予防法務の側面

話の中で、司法書士の仕事は予防法務としての側面があるといった件(くだり)がある。街の身近な法律家と呼ばれる所以もそういったところにあるのかもしれない。

例えば登記業務。現状、建物表題登記をすることは義務だけど、所有権保存登記等の権利の登記をするのは義務ではない。手間もかかるし登録免許税もかかるし、じゃぁ権利の登記をしなくても何も問題がないのかというと、そういう訳でもない。

例えば二重譲渡の問題。売主がAさんとBさんに二重に建物を売った場合、それぞれが建物の所有者は自分だと言うのは勝手だけど、第三者対抗要件は登記。登記を備えなければ第三者に対して所有権の取得を対抗できない。相手方が登記をした後に、自分が登記をしていないことを後悔しても手遅れ。登記をすることは義務ではないけど、自分を守るための権利でもある。その権利を行使する際、司法書士が携わることで円滑に登記手続きを進めることが出来る。

他には相続登記の問題。相続登記の義務化が検討されているようだけど、現状では相続登記をすることも他の権利の登記と同様に義務ではない。じゃぁ相続登記をしないで良いのかというと、そうでもない。

例えば、相続物件を売却してお金に変えたいと思った時。実務上は相続登記を入れた上で買主に所有権を移転させることになる。相続登記を放っておくと、権利関係が子や孫に引き継がれたり兄弟姉妹の親族に引き継がれたりして膨大な数の相続人に引き継がれることになる。相続登記を入れるには、それら全ての相続人の協力や相続放棄等の手続きが必要でになる。

相続人の数が増えると、普段付き合いの無い相続人もいて協議が難航することもある。また、長年放置したことによって、役所の住民票の保存期間が経過して廃棄されてしまっているなど、必要書類を集めるのにも一苦労することになる。一時期の手間を惜しんで相続登記をしなかった故に、後々何倍にも問題を孕んで子供に引き継がせてしまうかもしれない。相続登記を円滑に進めることも、予防法務の側面がある。

あとは不動産売買契約を締結する際の売買契約書のチェックも。不動産業者が仲介する場合は問題が起こることは少ないだろうとけど、個人間売買で契約を締結する際に、売買契約書がザルだと後々問題が生じる可能性がある。登記原因証明情報ともなる売買契約書に抜けがないように確認するのも予防法務的な要素がある。

家族信託も予防法務の最たるものかも。いざ認知症になった際に困らないように、認知症になる前にあらゆる事態を想定して信託設計をして信託契約を締結しておく。家族信託という言葉が徐々に認知され出している気がするけど、信託に精通していないと実際に信託の制度を活用するのは難しい。家族信託を活用する際には、業務に精通した司法書士の活躍が期待される。

人と人が関って生きていく限り、問題の火種はどこで発生するか分からない。大火事になってしまうと火消するのは、えらく大変。大火事になる前に問題の火種を消すことは、とても意義のある仕事だと思う。

弁護士と司法書士の協力関係

2話の中で、弁護士と司法書士は協力関係になることも多いとの件(くだり)がある。

本当にそうで、実務をしていると弁護士にアドバイスを貰ったり、訴訟になりそうな案件の場合は相談者に弁護士を紹介したりする。逆に弁護士から登記の相談をされたり、登記業務を紹介して貰うこともある。専門領域の違う専門家同士の繋がりはとても大事。

自分が感じる弁護士と司法書士の関係って、現場レベルでは良好。上の方では色々と対立があったりするのかもしれないけど。どっかの国と国が、お上レベルでは険悪だけど、民間レベルでは活発な交流が行われていることが頭を過ぎる。政治的な話は詳しく分からないけど、仕事は依頼者のためにすること。依頼された内容が最善の結果に繋がるように、他士業や他の専門家との協力関係は欠かせない。

セイギとミライ』は単純に読み物としても面白いけど、1話ごとに色々と考えさせられる内容で面白い。第3話も楽しみ!


他の人はこんな記事も読んでます