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『セイギとミライ-熱血司法書士の事件簿-』第12件目「祖母の願い、孫の思い」

セイギとミライ12祖母の願い、孫の思い

セイギとミライ-熱血司法書士の事件簿』第12件目のテーマは「祖母の願い、孫の思い」。

今回は司法書士の業際問題に関するワンシーンがある。あとはずっと気になっていた未来先生についてのエピソードが少し。

越権行為は懲戒や刑罰も。業際問題はデリケート

士業には独占業務と呼ばれる、その士業にしか出来ない業務がある。例えば相続業務の場合、司法書士は相続人全員で協議がまとまった遺産分割の内容を書面に起こす遺産分割協議書の作成は出来るけれども、遺産分割協議の途中で揉めても依頼人の代わりとなって遺産分割協議に参加することは出来ない。司法書士が依頼人に代わって交渉したり、協議をまとめるために仲裁人となったりすると、非弁行為として弁護士法違反となって刑罰が科される(弁護士法72条、77条)。

相続案件を受ける際には、事前に司法書士ができること・できないことを説明するようにしている。まだ遺産分割協議がまとまっていない段階で相談をしに来た依頼者にとっても、司法書士の業際を理解することは、その後に遺産分割協議で揉めた場合の対処法(弁護士への相談・依頼等)を知っておけるので良いこと。

他にも、相続税などの税金に関して相談を受けたりすると税理士法違反になる場合がある。とは言っても、相続の相談で「相続税はかかりそうか?」といった話は相談の中で出ることもあるので、個別具体的ではなく一般的な回答をした上、「必要であれば税理士さんを紹介します」と回答する。税金の計算は複雑なので税理士という専門職に任せるべき。複雑でなくても、そもそも司法書士に税務申告をする権限はない。

司法書士の越権行為の話を書いたけど、逆もしかり。司法書士には権利に関する登記申請代理の独占業務があり、行政書士や税理士が報酬を得る目的で不動産の相続登記の申請代理をするのは司法書士法違反。それぞれの士業には独占業務があって、それを守りながら仕事をしている。

…と書くと、なんだか士業同士で縄張り争いしていがみ合っているみたいだけど、自分の周りの現実はそんなことはない。むしろ、それぞれの専門分野に精通した士業の先生を頼りにしているので、司法書士業務の範囲外のことが起こったら、積極的に相談して依頼をする。逆に登記に関することなど、司法書士の業務であったり専門分野である場合には、相談もされ、依頼をしてくれる。各士業がそれぞれの分野の専門家として業務に精通することで、依頼者にとって最適解を導けるようになる。

依頼者の心に寄り添って仕事をすること

「司法書士の仕事に適しているのは、人の心に寄り添える人間だと思う」という件がある。

確かに、依頼者の立場に立って、依頼者の気持ちで仕事を進めるのは大切なこと。決済業務では、依頼者の心情に深く入り込むことは少ないかもしれないけど、遺言や相続、簡裁代理業務では依頼者の感情を汲み取りながら進めないといけないことが多い。司法書士に限らず、相手の立場で仕事をするのは当然のことかもしれないけど。

でも、必要以上に入り込むことは適切ではない。この仕事をし始めた頃、知人からある案件の依頼を受けてした仕事でそんなことを思った。その案件は結構ややこしくて、依頼者も切羽詰まった感じだったので、昼も夜も休日も関係なく電話がかかってきたり、時には呼び出しにあったり。その時はなんとかしないとと思って奔走していた。

でも、法律的に、また総合的に見て依頼者の考えに賛同できないこともあり、そういった時は根拠を示してできないことを伝えるのだけど、納得できない時にはこちらを攻撃してきたり。そういった場合でも、自分の行いに反省すべき点がないかを振り返った上で、開き直りじゃないけど「この仕事をしていると、そういったこともあるか」と受け止めることは出来るのだけど。

最終的には、良い結果に終わって良かったのだけど、そこに行きつくまでの過程を振り返ると、知人ということもあって、必要以上に感情移入してしまったなと。依頼者の立場に立って仕事をすることは大切だけど、それはあくまで依頼者から依頼を受けた専門家の立場としてすることであって、依頼者自身のそのものの気持ちになって感情移入することではないことを、その時に学んだ。それから経験も積み、依頼者の気持ちに寄り添いながらも、今はバランスを取りながら業務が出来ていると思う。

セイギとミライ』次は13件目!楽しみ!


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