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先日、先輩司法書士から「なんで弁護士を目指さなかったの?」と聞かれた。
それって、どういう意味だ??
司法書士じゃなくて、弁護士を目指さなあかんのか?
司法書士は弁護士の下位資格だという風潮
司法書士は弁護士の下位資格だと思われているんだろなーと感じることはたまにある。
司法書士の中にも、弁護士の中にも、司法書士でも弁護士でもない人の中にも、そう思っている人が一定数いるのは事実だと思う。
そう思われている理由は、おそらくこんなとこだろう。
- 司法書士試験より司法試験の方が難しい(と思われている)
- 弁護士は司法書士業務も出来る資格を持っている
- 弁護士は訴訟業務をオールマイティにできるけど、司法書士は簡裁代理権しかない
- 司法書士の劣等感
司法書士試験より司法試験の方が難しい(と思われている)
司法試験を受けたこともないし、司法試験の勉強をしたこともないから、司法試験が司法書士試験より難しいかどうかは分からない。そう言っている人が結構いるので、実際にそうなのかもしれない。
でも試験の難しさって、資格の優劣に繋がるんだろうか。自分は法律系の資格試験には、司法書士試験と行政書士試験と宅建士試験に合格している。体感では、試験の難易度は司法書士試験 > 行政書士試験 > 宅建士試験の順で難しいと思う。
だからと言って、行政書士が司法書士より劣っているとは全く思わないし、宅建士が行政書士の下位資格だとは全く思わない。そもそも専門領域が違う。
仕事をする上で、行政書士に頼ることもあるし、行政書士のプロの仕事を目の当たりにして尊敬することも多々ある。
宅建士は不動産取引のプロでもあるので、不動産取引の一部しか知らない自分では知らない分からない出来ないことをやってのけることができる。不動産登記の仕事は宅建士である不動産業の人から頂くことがほとんどなので感謝もしている。
弁護士の多くは訴訟のプロだろうし、司法書士の多くは登記のプロだと思うので(※)、そもそも資格に優劣をつけること自体がナンセンス。
※弁護士は訴訟以外の、司法書士は登記以外の業務を専門にしている人もいるけど、話を分かりやすくするために、訴訟のプロと登記のプロということにした。
弁護士になりたいから司法試験を、司法書士になりたいから司法書士試験を受けたのであって、たまたまその試験が司法書士試験より司法試験の方が難しかったってだけなんじゃなかろうか(2回目だけど、ほんとのところは司法試験が司法書士試験より難しいのかは知らない)。
試験が難しいから弁護士が司法書士より上なんて考えは、良い大人になってどーでもいい学歴を自慢するような人間のする考えと同じ。
弁護士は司法書士業務も出来る資格を持っている
弁護士になると、司法書士にも税理士にも行政書士にもなることができる。
でも、資格があることと、実際に仕事が出来るかどうかは、全くの別問題。
自分は司法書士の仕事をメインにしていて、行政書士や宅建士になる資格は持っているけど、登録もしていないので、それらの業務は全くやっていない。
資格を持っていることが偉い訳ではない。資格って、その資格を活かして仕事をして、社会に役立ててこそ意味があるんだと思う。
弁護士は、司法書士にも税理士にも行政書士にもなれる資格があるから上位資格だという考えを持つ人がいるんだとしたら、それには疑問を感じる。
弁護士は訴訟業務をオールマイティにできるけど、司法書士は簡裁代理権しかない
これに関しては、司法書士は弁護士より劣っていると思われても仕方がないと思う。
なぜなら、司法書士の訴訟代理権は、扱える訴額にも審級にも制限があって、司法書士に出来ないことでも弁護士だと出来るから。
でも、この点に関することを、弁護士と司法書士という大きなくくりでいっしょくたに考えて、弁護士の方が偉いんだと考えるのは短絡的だと思う。
司法書士の劣等感
司法書士の中には、弁護士に対して劣等感を感じている人が少なからずいる。
例えば、弁護士になりたかったけど、なれなかったから司法書士になったという人。これには2つのタイプがある。
一つは、始めに弁護士を目指していたけど、司法試験には受からず司法書士になった人。「司法試験が無理だったから、司法書士試験に転向したんだよねー」と聞くと、その人の話ぶりによっては、司法書士試験は司法試験の島流しで行きつく先なんだろうかと思っちゃうこともあるw。
もう一つは、司法書士試験に合格した後に、予備試験なり司法試験なりの合格を目指して勉強していたけど、結局なれなかった人。こういった人の中には、弁護士への未練がある人もいるだろうし、憧れを感じている人もいると思う。
自分は初めから司法書士になりたくて司法書士試験の勉強を始めた。弁護士になりたいとは思わなかったし、司法書士試験に合格した後に予備試験の勉強を始めて司法試験を受けようと思ったこともなかった。
特別研修を受けている時に、ふと「弁護士になったらどんな感じやろ」と思うことはあったけど、それは芸能人になってたら、とか、総理大臣になってたら、とか思う妄想と同じレベルの話。
弁護士の仕事は魅力的だと思う。でもそれは弁護士に限ったことではなくて、どんな職業にも魅力があるのと同じこと。自分には出来ないことを仕事としてやって、第一線で活躍している人は、どんな職業の人でも魅力的に映る。
司法書士の仕事が好きで今に満足していれば、他の職業が気になることはあっても、司法書士という職業に劣等感を抱くことはない。
弁護士になれなかったからといって司法書士であることに劣等感を抱いているのは、過去に引きずられて前に進めていないと言っているようなもの。そういった人たちが司法書士の中にいることで、司法書士は弁護士の下位資格であるという風潮を生み出している一因になっている気がする。冒頭に「なんで弁護士を目指さなかったの?」と聞いてきた司法書士も、この属性の人。
…と、ここまで書いてみて、「こんなこと書いているお前が一番、弁護士と司法書士の関係を気にしているんじゃないか」と思う人がいそうな気がしたけど、ここまで書いたので取り敢えず公開してみるw。