相談・依頼件数が銀行決済業務と同じくらい多いのが、相続登記に関する業務。不動産を所有する人が亡くなったら、相続登記をしないといけない。今のところ相続登記は義務ではないけど、相続登記をしておかないと、後々面倒なことになる。
相談・依頼の始まりは、紹介か飛び込み。紹介の多くはお付き合いのある地元の不動産屋さんから。「近所の○○さんの旦那さんが亡くなったから、相談乗ってあげて~。」みないな感じで始まる。
初回は電話か面談で「亡くなった人は誰か、家族構成、所有する不動産」等、 相続登記に必要な情報をヒアリングする。
相続登記の準備から申請まで
相続登記に必要な戸籍、住民票等を準備する。依頼者が既に持っている場合もあるけど、大抵は故人の出生から死亡までの戸籍等は職権で取る。戸籍等は本籍地のある役所でとるので、近くの役所で取れる場合は直接役所に行って取りにいく。遠くの場合は郵送で請求する。
この仕事を始めた頃は、郵送請求に必要な書類を封筒に入れ忘れたり、必要な金額の小為替を入れ忘れたり等の失敗をしてしまっていた^^;。
この仕事を始めるまでは、現在戸籍しかみたことが無かった。墨字で縦書きされた改正原戸籍とか除籍が読みにくくて仕方がなかった。今も読みにくいと思っているけど、読む回数を重ねていくごとに「これはこう書いているのかな?」となんとなく予想がつくようになってきた。
試験勉強では記述式の添付書面に「出生から死亡までの戸籍等」と書くだけだけど、実際は生前に転籍を複数回している場合もあって、出生から死亡までの繋がりのつく戸籍等を揃えるのは結構な手間がかかることを実務を始めてから初めて知った。
相続人が複数であっても、相続人のうちの一人が単有で所有権を相続する場合が多い。共有で持分を登記した場合は、後々面倒なことになることが多いから。例えば共有者のうちの一人が亡くなって相続が発生した場合、法定相続すると「叔父・伯母・甥・姪」などで共有することになり共有関係が複雑になっていく。
相続人が複数で、相続人のうちの一人が相続する場合は遺産分割協議書を作成する。遺産分割協議書も、この仕事を始めるまでは見たことが無かった。初めて見た印象は「意外とあっさりしたものなんだなぁ」という感じだった。文書は必要十分なことを最低限の記載で分かりやすく書くのが一番だと知った。
大抵は遺産分割協議がまとまってから依頼がくるものだけど、たまに故人の戸籍等を収集している時に隠し子が発覚することもある。その場合は、その隠し子のはんこも必要になるので、相続人全員のはんこが揃うまでに時間がかかる場合もある。
登記簿上の住所と住民票の住所が違っている場合は、戸籍の附票をとって住所の繋がりがつくことを立証しなければいけない。戸籍の附票は古いものは廃棄されていることもあるので、その場合は上申書だったり保証書だったりを添付する。役所や地域によって、この取り扱いは違うみたいなので、普段よく登記申請する地域と違う法務局に申請する場合は要注意。
必要な添付書類の準備と同時に、申請書を作成する。申請書を作る時は、受験勉強で覚えた雛型の内容がそのまま役に立つ。
申請書が出来たらプリントアウトして、登録免許税の額の印紙を貼る。添付情報で依頼者やその他相続人のはんこが必要なものにははんこを貰って、申請書と一緒に綴じて法務局に提出する。申請は、近くの法務局だと窓口に持っていくけど、遠くの法務局の場合は郵送やオンラインで申請する。
申請後は、登記識別情報や登記完了証を綴る表紙を作成したり、申請に必要で集めた書類等を整理したりしながら登記の完了を待つ。
戸籍が足りなかった場合は、法務局から補正の電話がかかってくる。大抵は「○○さんの〇〇年に△△から転出した際の××市の戸籍が足りません」といったように、丁寧に誰のどの部分の戸籍が必要かを教えてくれる。こういった電話がかかってきたら、大慌てで戸籍を取り寄せて法務局に提出する。
無事、登記が完了したら、登記識別情報や登記完了証を受け取って、依頼者にお渡しして事件は完了となる。戸籍の読み方や職権での請求の仕方、住所の繋がりがつかない場合の対応法など、実務を始めてから初めて学んだことが沢山あった。補助者という立場は色々と失敗しながら学べるので得るものが多い 。