最近、相続に関する登記相談が多い。
「お父さんが亡くなったから遺産分割協議をして息子名義にしたい」といった比較的シンプルなものから、「兄弟が亡くなったんだけど、自分が相続人みたいだ。兄弟とは絶縁していたから自分は相続には関わりたくない」といったものまで、相談内容は様々。
家庭裁判所への相続放棄手続
相続放棄の申立ては、家庭裁判所に対しておこなう。裁判所へ提出する書類の作成は、司法書士法第3条第1項第4号で、司法書士の業務として規定されている。
司法書士法第3条第1項第4号 裁判所若しくは検察庁に提出する書類又は筆界特定の手続(不動産登記法(平成16年法律第123号)第6章第2節の規定による筆界特定の手続又は筆界特定の申請の却下に関する審査請求の手続をいう。第八号において同じ。)において法務局若しくは地方法務局に提出し若しくは提供する書類若しくは電磁的記録を作成すること。
相続放棄の申立ての手続きの流れは、大体こんな感じ(うちの事務所の場合)。
- 依頼を受ける
- 戸籍を集める
- 相続放棄申述書を作成する
- 家庭裁判所へ提出する
- 照会書が依頼者のもとへ届く
- 完了
①依頼を受ける
まずは依頼者から依頼を受ける。相続放棄する理由や、自分が相続人であることを知った日等をヒアリングする。
相続放棄は、知ってから3カ月以内にしないといけないので、知った日がいつであるかを聞くのはとても重要。
依頼を受ける時には、依頼者の現在戸籍と被相続人の除籍謄本があったら話が早い。
相続放棄の申立ての委任状や、送達場所等届出書に署名・捺印を貰う。
②戸籍等・住民票除票/戸籍附票を集める
相続放棄申立ての依頼を受けたら、次に足らずの戸籍を集める。依頼を受ける段階で依頼者自身で集めていたりする場合もあるけど、大体は、足らずの戸籍は職権で集めることになる。
被相続人の住民票除票(又は戸籍附票)と、依頼者の戸籍謄本は、依頼者の立場がどうであれ共通して必要だけど、それ以外の戸籍等は、依頼者の立場によって異なる。
依頼者が被相続人の配偶者・被相続人の子(第1順位の相続人)の場合は、①被相続人の死亡の記載のある戸籍等謄本が必要。依頼者が被相続人の代襲者の場合は、①に加えて被代襲者の死亡の記載のある戸籍等謄本も必要。
依頼者が被相続人の直系尊属の場合は、①被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍等謄本、②被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している人がいたら,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍等謄本、③被相続人の直系尊属に死亡している人(ex.相続人が祖母の場合の父母)がいたら、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍等謄本が必要。
生きている間に頻繁に転籍を繰り返している場合は、今のところ本籍地のある役所でしか取得できないので、この「出生から死亡までの戸籍等」を集めるのが結構大変w。
依頼者が被相続人の兄弟姉妹(第3順位の相続人)の場合は、①被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍等謄本、②被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している人がいたら,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍等謄本、③被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍等謄本、④依頼者が代襲相続人の場合,被代襲者の死亡の記載のある戸籍等謄本が必要。
先順位の相続人が相続放棄をしていて、その時に提出している戸籍等で、今回必要な戸籍等とされているものが被っている場合は、その戸籍等は提出する必要はない。
近場の役所で戸籍を取得できる場合は、直接役所に取りにいくけど、遠くの役所の場合は、郵送で請求する。郵送の場合は、①職務上請求書、②小為替、③返信用封筒、④(役所によって)司法書士会員証のコピーを入れて請求する。
③相続放棄申述書を作成する
相続放棄申述書は、裁判所のHPでダウンロードできる。
申述書には、800円分の印紙の貼付が必要。
④家庭裁判所へ提出する
①相続放棄申述書、②戸籍等、③委任状、④送達場所等届出書、⑤司法書士会員証のコピーと名刺、⑤郵券(切手)を家庭裁判所へ提出する。
⑤郵券(切手)は、家庭裁判所によって必要枚数が異なるので、提出する前に要確認。
また、提出する前に、何を提出したか、提出した後に手元でも分かるように、提出書類を全てコピーしてとっておくと、後々便利なことが多い。
⑤照会書が依頼者のもとへ届く
相続放棄申述書が家庭裁判所で受け付けられると、審理後に、照会書が依頼者のもとへ届く。
照会書の内容は、依頼者の属性等によって異なる。基本的には「相続放棄の申述は、間違いなく自分の意思でされましたか?」といった内容になる。
照会書にある質問事項に応えて、署名・捺印をして家庭裁判所へ返送する。
⑥完了
無事、相続放棄の申述が受理されると、相続放棄申述受理通知書が家庭裁判所から届く。この時、送達場所等届出書に、事務所宛に送達して欲しい旨を書いておくと事務所に届くので、その後の相続登記の手続きにスムーズに入れるので便利。
家庭裁判所の方は優しい方が多い印象
これまでに何度も家庭裁判所へ相続放棄申述の申立てをしているけど、家庭裁判所の方は親切で優しい方が多い印象。どこの裁判所でも、分からないことを聞いた時は、とても丁寧に教えてくれる。
仕事がら色んな役所にいったり電話で問い合わせたりすることが多いけど、どこの家庭裁判所の方の対応も温かくて、好きな役所の一つ。
そういえば、研修中に裁判官や裁判所書記官の方と交流する機会が何度かあったけど、その時も良い印象だった。
仕事をしていると、分からないことや知らないことが沢山出てくる。そういった時に気軽に聞ける方達の存在は、とてもありがたい^^。