先日、馴染みのお店の大学生のバイトの子から、就職が決まったという連絡があった。
前途有望な若者の朗報を聞けて本当に嬉しい。
遠回りは世界を広げる素晴らしい経験
大学生君には夢がある。人が聞いたら荒唐無稽な夢に思えるような夢だけど、夢について語る大学生君の目は純真無垢そのもので、夢に向かって行動もしている。彼の生きる原動力は、その夢があるからで、その夢を叶えるために日々努力している姿がとても眩しい。
今回、彼が決めた就職先は、一見すると、その夢とは真逆にあるような就職先。でも遠回りのようで、そこを通ることで、その経験が後々生きてくると思う。何故その就職先に決めたのか聞いてみたところ「一つのことを極めるにしても、全く違う世界を知ることで見識を広げたり、自分の世界にだけいると交わることのない人達と関われることで学ぶことが多そうだから」みたいなことを言っていた。
今の日本では、まだまだ”新卒”というカードは社会の入り口への黄金切符のように思える。人生に一度だけ使える特権。入った会社にもよるけど、新卒という括りで会社で手厚い研修を受けられたり、良い意味でも悪い意味でも新卒が故の社会の洗礼を受けられる。自分にも新卒の時期があって今に至るわけだけど、新卒の特権を無駄にすることなく、一番に入りたいと思った会社に内定を貰えて、これから前途洋々な未来を作っていける若さも持っている大学生君が、ちょっと羨ましくも思えた。
子供の頃からの夢を叶えるために、その道一本で脇目をふらずにひたすらその道を突き進むのは、それはそれで素晴らしいこと。でも、彼のように成りたい姿は決まっているけど、そこに行きつくために色々と経験するのも素晴らしいこと。見る人によっては寄り道に見えるかもしれないけど、どんな経験であれ、先々無駄になるような経験など何ひとつない。
巡り巡って次に繋がる今の経験
自分の場合は、全く異業種の世界から司法書士へ転向した。「もっと早く司法書士の世界に飛び込んでいたらどうなっていたのだろう」とふと思うこともある。でもそれは後悔という気持ちではなくて、以前の経験が今の仕事に生かされていることもあるし、前の会社で働いていた時に出会えた人達から影響を受けて、今の自分という人間が形成されてきたようにも思うので、司法書士になる前にその経験があって良かったなと思っている。
受験勉強が長引いたこともそう。渦中にいる時は大変に思うことが多くて、先が見えない中で陰鬱な気持ちになることもあった。振り返ってみると失うものも沢山あったけど、悪いことだけでもなかった。受験勉強をしていたから出会えた人もいるし、長引く中で何度もテキストや過去問を解くことで得た知識は、血となり肉となって揺るがない知識として今も脳にこびりついていると思う。
司法書士試験の勉強を始める時、自分の中では、どんな困難な道でも本当に自分が手に入れたいものだったら、それを手にするまでの努力は惜しまずに続けられると思っていた。でも「今から勉強して合格するのは難しいんじゃない?」と、とても親切にアドバイスをくれる人がいた。中には「イバラの道だね」って言ってくる人もいた。
学校を卒業したら、それまで横並びだった人達が、それぞれの足で歩いていくようになる。学校という守られた空間から飛び出した時に決めた進路が、そのまま先々まで進むべき道だと思える人って実は少ないんじゃないかなと思う。何か始めたいと思った時が、その人のタイミングであって、何かを始めるのに遅いなんてことは無い。それまでの経験が活かされないような道に転向するように見えても、結局は巡り巡って次に繋がっていく。
社会に出て色々な世界を知って、別のことに興味を持ったり、これまでとは違った考えを持つことって自然な流れな気がする。そう思った時に方向転換したいと心から思ったら行動に出るだろうけど、「年齢が」とか「これまでの経験が」とか「世間の目が」とかを理由にして踏みとどまるのは勿体ない。自分の人生は自分で作るもの。自分が今未来を変えたいと思ったなら、気の赴くままに進むようにしている。
大学生君の場合は、最終的には今持っている夢を叶えるために、どこかのタイミングで方向転換するんだと思う。でも仕事をする中であったり出会った人によって夢も変わるかもしれない。「あの時あー言ってたのに辞めたんや」と思われるかもしれないけど、人の考えは変わっていくものだし、それはそれで良い。人からどう思われるかを気にして自分のやりたいことが出来ないことほどつまらないことはない。
今後、彼がどんな道に進んだとしても、真面目で一直線な彼が決めて進んだ道ならば、老婆心ながら見守っていきたいと思う。