『セイギとミライ-熱血司法書士の事件簿』第8件目のテーマは「遺言書の意義」。
遺言書を作成する人、遺言者が亡き後に遺言書を見ることになるだろう人、専門家、それぞれの立場の気持ちや仕事が描かれていて面白かった。
遺言書作成を専門家に依頼する意味
話の中で、公正証書遺言の作成の流れや費用の算出の方法が紹介されていた。とても分かりやすい。
遺言は、専門家に依頼しなくても作成することが出来る。公正証書遺言でも自筆証書遺言でも。『セイギとミライ』の中では、専門家とは、弁護士・司法書士・行政書士など「遺言関係業務」を行う資格者全般のことと紹介されている。
自筆証書遺言を作成する遺言者の要件は、遺言時に15歳以上で意思能力があること。自筆証書遺言の成立要件は、全文・日付・氏名の自書、押印(民法第968条)。財産目録はパソコンで作成することが出来る。要件さえ満たせば、専門家を介さなくても自筆証書遺言は作成できるし、自分で公正役場とやりとりして公正証書遺言を作成することもできる。
じゃぁ遺言書の作成を専門家に依頼する意味はどこにあるか。『セイギとミライ』とは”潤滑油”だと言っている。公正証書遺言を作成する場合、依頼があってから戸籍や財産に関する資料等の必要書類を集め、遺言書案を依頼者と公証役場に確認とりながら仕上げていく。その後日程調整をして公証役場での公正証書遺言を作成する日を決める。
こうして書くとすぐに出来そうなものだけど、遺言者の遺志を実現するために必要な準備をしたり、正しく文案を作成したり、公証人と専門的なやりとりをしたりなど、専門家が入ることでスピーディに正確な遺言書を作成することが出来る。
例えば、今この記事は、机にパソコンを置いて椅子に座って書いているわけだけど、机と椅子は家具屋さんで買ったもの。机や椅子は自分で作ろうと思ったら作れるけど、自分でやろうと思うと、そもそもどうやって作るかを調べて、必要な材料を買い揃えて、時間と体力をかけて作り上げて、という膨大な作業が必要になる。そして出来上がったものはというと、費やした時間や体力・お金に反して、家具職人が作ったものより当然質は劣る。
机や椅子の場合はそれも”味”になるかもしれないけど、遺言書の場合は”味”なんてものは必要なく、むしろいらないもの(但し、付言に関しては味というか気持ちが伝わる文面であることは必要だと思う。)。司法書士が遺言書作成をサポートするにあたっては、それまでに習得した知識や実務での経験等から、遺言書を完璧なものに仕上げる。専門家は円滑に遺言書を作成するための”潤滑油”。共感できる例えやなー、と思った^^;。
『セイギとミライ』の第8話では、遺言書を作成する一般的な流れが分かったり、遺言書を作成する人や、それに関わる人の気持ちが分かったりと、なるほどなーと思うことが多かった。『セイギとミライ』は、ミステリー小説やドラマのように、遺言書が引き出しから見つかって事件が起こって…みたいな話ではない。第1巻の巻末に神山先生が『各話の案件は創作ですが、手続きや事務所内のやり取りはできるだけ自分の経験してきたリアルな現場を再現するように心掛けています。』と書いているとおり、リアルな設定が、実際に司法書士業に携わる立場だと共感しながら読み進めることができる。
司法書士を題材にしたドラマや小説は少ない。数少ない司法書士をメインに扱った漫画が『セイギとミライ』のような秀逸な漫画で嬉しいな。次は第9話!楽しみ!